うつ病は、誰でもなる。【職場のうつ病は感染病だという話】

virus in workplace メンタルタフネスをつくる

こんにちは!りっきー塾長です。

さて今回、私自身の経験から、確信をもって提言したいことがあります。それは特に職場において「うつ病は感染病である」ということ。

 

私は約20年、社会で働いていますが、その間に、私を含めて10人以上の「メンタル病んだ人」を見てきました。

そしてメンタルを病む人は、「同じ職場から同時多発的に発生する」もしくは「毎年同じ職場から発生する」というパターンが多かった。

今回は、なぜメンタルの病気が「感染症」なのかという理由について、実体験をもとにしてまとめてみたいと思います。

 

また、職場において「社会的・認知的に未熟な人」「発達障害気味の人」が一定の割合でいます。私の周りにも、そういう方がいました。

実際の事例をもとに、認知的に未熟なひと、発達障害っぽい人とはどんなタイプか?またそういう人にどう接すればいいのかを、考えていきたいと思います。

 

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うつ病は「感染病」という話

うつ病は医学的には「感染病」ではありません。

細菌やウィルスが感染するわけではなく、あくまで自分の中のホルモン変化など、体内という「閉じた世界で」起こるからです。

 

しかし私はあえて、「うつ病は感染病」だと言いたい。

なぜならば、組織の中で「不幸は連鎖する」からです。

新型うつ病は、「個人の未熟さ」がかなり支配的なので別です。

しかし従来型うつ病は、その組織自体に「うつ病」の温床となる部分がある場合が多い。

 

実際に私が経験した「うつ病」や「適応障害」は、一人だけではなく、その人をはじめ、同じ職場で同時に複数の人がなったり、時期は多少ずれても、毎年同じ部署から出たりした例が複数ありました。

 

上司が引き金になっている場合があれば、チームとして機能不全に陥っている場合があります。

以下に実際私が見て、経験した、「うつ病が伝染する」職場について、その典型例を解説したいと思います。

 

新しい環境に適応できずに

これは数年前、当時私の部下だった人に起きたエピソードです。

彼(Aさん)は別の部署で「その道一筋20年」の、生え抜き社員だった。

その活躍から、上司の目に留まり、隣の私の部署にヘッドハンティングされてきた人でした。

 

しかし結論から言うと、Aさんは私の部署で、うまく適応できなかった。

隣の部署とはいえ、設備の機能や使い方などが全く違うので、一から学び直す必要がありました。

Aさんは新しいことを吸収するのは苦手ではなかったが、チーム長として私の部署に招かれたため、いきなり日々判断を迫られるという業務内容になった。

自分のペースでいちからコツコツ知識を習得する時間がなかったのです。

 

そうこうしているうちに、製造現場では大小含めいろいろなトラブルが日々発生します。

現場の知識がほとんどないまま、「判断しなければならない」状況に、だんだんとストレスが溜まっていった。

上司の私がフォローできればよかったのですが、ちょうど私もとても忙しかった。

というのは時期を同じくして私は、二つの部署のマネージャーを兼務することになったからです。

兼務した新しい部署は、私にとって初めてのところで、かつ問題も多かった。

だから私はそちらの業務にかなりの時間を取られてしまい、従来の自分の部署への関与が少なくなっていたんです。

 

この2つ環境の変化が同時に起こり、Aさんは徐々に追い詰められていった。

 

体の異変とうつ病の発病、そして負の連鎖

depression

そんな状態が2か月弱続いたある日、Aさんが言いました。

「最近、おしっこが止まらんのや。さっきしたと思ったら、またすぐにトイレに行きたくなる。昨日なんか、1日の半分トイレに入っとった感じだ」

 

これは、ストレスからくる「頻尿」でした。

うつ病患者の約7割に出る症状です。

ここからAさんは、夜寝れなくなり、寝てもうつらうつら、夜中に起きて、それからまったく寝れなくなります。

 

睡眠障害でした。

この「睡眠障害+頻尿」が2週間程度続いたとき、Aさんはメンタルクリニックに行きました。

そして「うつ病」という診断が下され、その後2か月会社を休むことになりました。

 

腹心だった彼をうつ病で失った(自宅療養)あと、自責の念と業務のストレスから、今度は私が「適応障害」になってしまいました。

そんな私をフォローしようと、頑張りすぎた結果、私のもう一人の部下も「軽い適応障害」にかかり、右目が見えなくなるという症状が出て、10日間ほど、自宅療養することになった・・

 

まさしく「負の連鎖」でした。

 

「負の連鎖」を解析する

この事例では、いろいろな環境変化が重なり合わさり、その結果多くの人が病んだ、という結果になってしまいました。

ハラスメント系部長の就任、私の2チーム兼務マネージャー発令、Aさんの新しい部署でのチームリーダー業務。

そして私とAさんは、新しい業務を「まじめに、自分なりに完璧にこなそう」としてしまった。

 

ここに落とし穴があったということです。

私もそうだったのですが、Aさんもそれまで、仕事ぶりが認められて、早いタイミングでリーダーに昇格していた。

いつの間にか、「デキル自分」に対してのプライドが作られていたんだと思います。

 

しかし二人とも、新しい環境で、うまく仕事をさばくことができなかった。

その状態がストレスとなり、また「デキていない自分」に耐えることができなかった。

十分な時間の猶予があれば、コツコツと一から覚えることもできたが、二人ともすでにリーダーになっており、日々の判断・調整業務に追われ、新しいことを学習する十分な時間がなかった。

 

やりたいこと(=学習)ができない、やるべきこと(=判断)が押し寄せてくる、その結果、自分がうまく仕事ができている感覚(自己効力感)が著しく低下していった。

うつ病などのメンタル系の疾患は、不器用で仕事の覚えが悪い人だけが、なりやすい病気ではないのです。

その反対で、どちらかというと仕事の覚えも早く、わりと器用そうな人でもなる病気なのです。

 

職場における“未熟児”と“発達障害”

immature

ここで突然質問ですが、あなたの職場で、わりと変わった人いませんか?

とにかくすべての事柄について、人のせいにするというか、常に自分は被害者でいつも不当に扱われていると、いつもアピールしてくる人。

人は悪くないが、言動や行動がぶっ飛びぎみで、何を考えているのかさっぱりピーマン、出身は?と聞いたら、「宇宙から来ました」という答えが一番しっくりくる、ギリギリ地球人という人。

 

これらの人は、今までは「変人」という単一のジャンルで片づけられていましたが、今では、科学(精神医学?)の発展から、「発達障害」という新しいカテゴリに分類されつつあります。

 

私も会社において自分の身近な場所で、実際に「未熟型うつ病」と「発達障害」に接してから、この分野を勉強しはじめました。

今までは、職場において「ただのワガママで、ちょっと変わった、少々デキナイやつ」で片づけられていた人が、実は軽度の発達障害だった、という事例が増えているといいます。

私の部下にも「思考がちょっとぶっ飛んだ、仕事はどちらかというと遅い、デキナイ場面が多い奴」がいましたが、ある時きちんと病院で調べたところ、「軽度の発達障害」という診断が出て、心底びっくりした経験があります。

 

あなたの職場にも、こういう「隠れた発達障害、隠れた未熟児」がいるかもしれません。

 

未熟型(新型うつ)で実際にあった話

従来型うつは、周りからその「かわいそうな状況」を共感されることが多いんです。

誰が見ても激務とか、あの上司の下なら病んでもしょうがないとか、環境が激変したとか、つまり普通の人からみて「何となく原因がわかるよね」という場合が多い。

 

しかし未熟型は、「なんでその状況でうつになるの?」というパターンが多い。

どう見ても激務ではない。上司も超優しいし、厳しい環境とは言えない。

だから、周りから見て「まったく理解されないし、共感もされない」というものです。

 

病名にもなっているように、人間としての本人の成熟度が低いことが、原因であることが多いようです。

実際に私の周りでも2例くらい見たことがあります。

 

1例目は、「〇〇がこういう行動や言動をしたので、自分がおかしくなった」とか、いわゆる他罰的な言動が多く見られました。

また、自分は今の仕事は向いていないが、〇〇事業所の〇〇という部署なら、自分はやっていける、という、根拠のない自信というか、希望を語っていたようです。

 

彼はいつしか会社に来なくなり、仕事も全くしていない状態だったのですが、どうしてもお金は欲しかったらしく、欠勤(=無給)になりそうになると、朝と夜だけ、こっそりばれないようにタイムカードだけは押しに来るなど、結構綿密な計画と行動をしたりしていました。

また、たま~に会社に来ても、鍵をかけて個室にこもる。

そして定時が来ると、すっと帰るという始末。

 

プライベートはまあまあ充実していたらしく、好きなコミュニティへの投稿や、休日のサイクリングなど、健康な姿を目撃されたりしています。

従来型うつ病のように、全てのエネルギーが失われ、家から出るのもおっくう、という状態ではない。

ただ、会社にいる時だけは「閉じた貝」になっていた、という感じでした。

 

 

2人目のパターンでは、彼もいわゆる「幼稚な万能感」を持っていたタイプでした。

ただ彼の場合は、内に秘めた攻撃性が強く、気に入らないことがあると、カッターナイフを机の中に忍ばせて、なんか「コロスコロス」とか相手の名前をブツブツ唱えながら、机の中でチキチキやっていた・・なんて都市伝説もありました。

 

結局彼らは、最後は、退職していきました。

まとめ表にあるように、「休養と服薬」では治らなかったんですよね。

従来型なら、ざっくりいうと「がんばりすぎない自分になる。それを認める」ということで、時間をかけて治っていきます。

 

しかし新型は「幼稚な万能感」「完全他責型」という認知を直さないと、社会に適合できないんですよね。

これは精神医学というよりは、発達心理学というか、うつ病の治療とは違ったアプローチが必要になります。

 

発達障害と自閉症スペクトラム

世の中には、「そもそも『普通の会社員』という働き方がムリ」という人もいます。

自閉症スペクトラムなどの、発達障害を抱える人に多いといわれています。

 

アインシュタインもエジソンも、ビルゲイツもスティーブ・ジョブスも、程度の差はあれ、自閉症スペクトグラムの一種「アスペルガー症候群」だったといわれています。

ある一つの分野にはものすごい興味と才能を見せるが、その他のことは、まったく人並みレベルにできない、という特徴がある人です。

 

一昔前は「自閉症」といえば、幻覚が見えて、普通には生きられない、かなり終末的な病気と考えられてきましたが、最近ではかなり「普通に存在するもの」として市民権を得た印象があります。

ある分野で天才的な才能を発揮する起業家や有名人が、「私はアスペルガーです」とか「ADHD(注意欠陥/多動性障害)です」とか、普通に語る時代になってきています。

 

また各種調査の結果、いまでは一定の割合で、こういう症状を持つ人がいるということが分かってきました。

 

あなたの周りでも、こういう「自閉症スペクトラム」的な症状を持つ人、例えば周りの人となんか会話がかみ合わないとか、ごく簡単なことでいつも同じミスをするとかいう行動をするタイプがいませんか?

 

自閉症スペクトラムは、「ここからが病気!」という明確な境界があるわけではなく、症状の強さは連続的で、かなり症状が強く出ても、職場に適合している場合もあります。

 

私の部下2人が「軽い発達障害だった」という話

A君の例 ~すべてを疑い、すべてを平等に並列に扱う達人?~

1人目のA君は、有名私立大学の理学部卒で、とてもマジメで誠実で、仕事にも真剣に取り組む人でした。

しかし彼が「ちょっと変わってるな」と思ったのは、いつも話が「堂々巡り」して、一向にゴールに向かっていかないことでした。

 

仕事は常に、ある所与の条件、与えられた状況(予算、期限など)の中で、ベストを尽くすという作業です。

普通の人は、与えられた道具立ての中で、それをいかに組み合わせるか?を考えていきます。

しかしA君は、与えられた条件そのものに疑問を持ち、「なぜその道具なのですか?そもそもその道具の意味はなんですか?」と、前提条件を疑い始めるのです。

ただ、この「前提を疑う」という姿勢自体は素晴らしいものもあるので、私はそれを評価しながらも、「前提条件の前提」をできるだけ丁寧に説明して、なんとか本題に戻そうとするんですね。

しかし彼は、その「前提条件の前提」をまた深掘りしたい衝動にかられ、またそこでなんか深みにはまっていくんです。

 

そうです。つまり、「物事の優先順位がつけられない」んですね。

疑うことは大切にしろ、時間は有限なので、まずは与えられた課題を解決する方向にエネルギーを注がなければいけない。

しかし彼はこのように、課題解決の取り組みの中で生じた「素直な疑問」にからめとられてしまって、一向に出口に向かってこない。

 

ある時なんか、「課題の出口に向かうためのアプローチ方法」を、ひざを突き合わして話し合ったところ、1対1のミーティングで6時間かかったことがありました。

実に、15時に始まって、終わったのが21時でした。

さすがにあの時は、脳みそが流れ落ちるのでは?と思うほど、疲労困ぱいになった・・・

 

普通なら、30分くらいで終わる内容です。

彼は、あらゆるところで発生する疑問の優先順位と、アプローチの道筋を見いだせずに、6時間話し合っても、まだ見えていない様子だった。

「順序だててストーリーを組み立てる」ということが、きわめて苦手だったんですよね。

彼は後に「軽度の発達障害」と診断されました。

このように「物事の優先順位を付けられずに、すべての事柄がすべて同じ重要度で並行的にみえる」というのも、一種の発達障害の症状;ADHD(注意欠如・多動症)と知り、かなり新鮮な驚きを感じたことを思い出します。

 

B君の例 ~時間と空間をずらす天才?~

2人目のB君は、超有名私立大学の理工学部で、彼も基本的に誠実に仕事に取り組む人でした。

ただ彼の場合は、なんというか、ちょっと宇宙人チックな側面がありました。

人と普通に会話はできるのですが、いつも何やら「フワッと」していて、つかみどころがない。

彼だけ、会話の「時間と空間」がややずれるんですね。

リアクションや、応答がワンテンポ遅れる、もしくは話の筋をぶっ飛ばして、結論に飛ぶ。

話が飛びまくり、いわゆる「起承転結」などの「話の型」がないんですね。

なので、彼と話をしていると、途中で脱線して結論にたどりつかないか、もしくは全く異次元の空間に連れていかれて、はて、何の話をしてたっけ?と迷子になるということが多かった。

 

仕事においても、やはり同様の傾向がありました。

彼に対する代表的なツッコミは、「いま、それやる?」「んで、何が言いたいの?」「は?それは何の関係があるの?」「で、いつから初めて、いつ頃終わりそうなの?」という感じですね。

はい、そうですね。いわゆる「フツーに、仕事があまり進まないタイプ」ですね。

 

ただ、ものすごく素直で、人の話はよく聞くんです。

ある時なんか、上司から「おい、B君!」と呼ばれたと思ったら、B君、何を考えたのか、ゆっくりと机の下に隠れだしたんですよね。

上司が「おい、あの、B君、呼んでるんだけど・・・」と、ちょっといぶかしげな顔をして再度呼ぶと、

B君は少したって、のっそり机の下から出てきて、こう言うんです。

「あの、例の仕事、まだ終わってないんで、それ言われるかと思って、避難してました・・」

これを「素直」と表現していいかは別として、彼は普通の人が持っていない「尖ったセンス」の持ち主であることは明らかでした。

 

彼はその後、マイクロマネジメント系の上司の下についた時に、指示されたことがあまりにもさばけず、少し病み気味になったようです。

そして、彼の「デキナイ部分、苦手な部分」が余計に目立つようになり、さらに体調不良でポツポツ仕事を休むようになった。

 

そこでメンタルクリニックに行ったところ、うつ病ではなく、「軽度の発達障害」と、それによる「軽度の適応障害」という診断が下ったようです。

 

彼らは、私の人生で初めて「発達障害」と診断された、身近な人でした。

ただこの発達障害は、「ここからが異常」「ここからが病気」という明確な境界は無く、症状が強くても、社会や生活に適応している場合もある。

 

大切なことは、自分自身も含めて、周りの人が隠れた「発達障害的な側面」があるかもしれないと、想定することだと思います。

もしそういう人がいたら、「未熟なヘンな奴」とか「社会不適合者」と決めつけずに、彼らに寄り添って、「何が得意で、何が不得意か」を見極めることだと思います。

そういう「特徴のある人」も含めて、職場でチームを作っていけることが、本当の「多様性」だと思います。

 

まとめ
  • うつ病やメンタルの病は、上司や職場の環境が引き起こす「伝染病」という側面がある
  • マジメで人の痛みが分かる人が、どんどん倒れていく「負の連鎖」が発生する場合がある
  • 大切なのは、「デキル」というプライドを持つことではなく、「デキなくてもOK。それも自分だ」という「不完全をも愛するココロ」だ
  • 発達障害は身近に存在する。「未熟なヘンな奴」「社会不適合者」と決めつけずに、彼らに寄り添って、何が得意で、何が不得意か見極めたうえで、チームを作っていくことが大切

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ではまた!

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